第36回 記事子供を真ん中に支えあい育ちあう「小さな村」
好奇心あふれる学びの空間
こちらの園は郊外の自然にかこまれた閑静な住宅地の中にあります。園舎に入るとまず目に入ってくるのは、玄関のすぐ横のガラス張りの広い厨房です。いきいきとごはんを作る調理師や栄養士の先生たち、美味しそうなお鍋の中の煮物、大きなお釜から上がる湯気…。子供たちが過ごす中で食べ物や食べ物を作る人に自然に興味や関心を持てるような環境になっています。
広い園舎の中には、ロールプレイの部屋、図書室、音楽の部屋、アトリエなどがあり、子供たちの“やりたい”や“やってみたい”を集中して深めることができるように整えられています。子供たちは自分の過ごしたい環境で満たされて過ごし、まわりの保育者たちはその姿を見守っています。
たくさんの木々に囲まれた園庭に出ると、小川が流れ、奥の方での水遊びが終わって部屋に戻る子供たちとすれ違います。足元のぬかるみについた大きな靴跡に興味を持ち、近くの友達とどの大人の足跡なのかを楽しそうに話す子供、園庭のヤモリを両手で捕まえて嬉しそうに見せてくれる子供、どの空間も子供たちのエネルギーと温かい空気に満ちています。
子供を真ん中に支えあい育ちあう「小さな村」
また、この園が取り組んでいる【まち歩き】では保護者と園の関わりを深め、住んでいる地域との繋がりを持つことに力を入れています。保育園と保護者、地域がしっかりと繋がり、支え合うことで「地域に保育の仲間が増えていくように」「子供たちにとっては周りの大人たちは全て保育者」と園長は言います。園の中には地域の工場や店舗でもらってきたリサイクル素材で製作した様々な作品が飾られています。楽しんで作ったことが伝わってくる力強い作品です。
子供たちが自らの意思でとりくみ、“やりたい”や“やってみたい”を深めていける環境を整える。それを支えているのは一人ひとりの子供たちの日々の興味の芽生えや成長の瞬間を見逃さない保育者の専門性です。
クラスに掲示されている保育者の話し合いの記録には、子供たちの今の姿や興味や関心の種、これからどんなことができるのかがぎっしりと書き込まれています。保育を楽しみ、子供たちの成長を喜びあう環境の中で保育者も過ごしているから気が付くことができる視点です。保育園は子供たちの生活の場であり、まわりの大人たちが保育者となってそれぞれの役割を果たし、子供たちを真ん中にして、支え合い、育ちあっている。一つの「小さな村」のような社会がこの場所で作られているのです。
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